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台湾の新進美術作家、日本のコンクールでグランプリ 一時帰国の経験基に

2021/02/12 18:07
公募コンクール「FACE2021」でグランプリを受賞した台湾出身の作家、魏嘉さんの作品「sweet potato」(SOMPO美術館提供)

公募コンクール「FACE2021」でグランプリを受賞した台湾出身の作家、魏嘉さんの作品「sweet potato」(SOMPO美術館提供)

(台北中央社)東京を拠点に活動する台湾の新進美術作家、魏嘉(ウェイ・ジャ)さんが、日本の美術コンクール「FACE2021」で1000人以上の応募の中からグランプリに輝いた。受賞作品は、新型コロナウイルスの流行下で台湾に戻った際に故郷に対して改めて認識した感情を基に制作した。魏さんは中央社の取材に対し、「自分が良いと思える作品でグランプリを受賞したことはとても励みになった」と喜びを明かした。

FACEは2012年度に創設され、今回で9回目。SOMPO 美術館(東京都新宿区)と読売新聞社が主催する。油彩や版画、写真など未発表の平面作品を対象に、年齢や所属を問わず、「真に力がある作品」を公募した。今回は計1193人から応募があり、将来国際的にも通用する可能性を秘めた作品83点を入選作品に選んだ。同コンクールでの台湾人の受賞は初めて。

魏さんは1988年台湾生まれ。台湾芸術大学卒業後に日本に留学し、多摩美術大学大学院修士課程で油画を研究した。2019年に修士課程を修了し、現在は東京藝術大学大学院の博士課程に在籍している。

受賞作「sweet potato」(スイートポテト)は縦約130センチ、横162センチの大作。スイートポテトとはサツマイモのこと。だが、作品中にサツマイモは描かれていない。魏さんによれば、台湾島の形がサツマイモに似ており、忍耐強い台湾人の精神は「サツマイモ精神」と呼ばれることから、台湾の象徴としてこの題を付けた。

魏さんは昨年3月ごろに台湾に一時帰国した際、新型コロナの影響で日本に戻ることができず、図らずも台湾に長期滞在することになった。コロナ以前はめったに台湾に帰らなかったという魏さん。台湾滞在の時間を大切にしようと、市場や公園、廟、観光名所などを家族や友人と訪問した。画面の右下にお椀のようなものが描かれる。この輪郭は一見、点線に見えるが、よく見ると「大稲埕」や「南門市場」など30カ所近くの場所の名前が数珠つなぎに書かれている。これらはいずれも魏さんが台湾滞在中に訪れた場所なのだという。

「突然の台湾滞在やコロナの影響で将来に不安を感じつつ、生まれ育った土地に対して改めて認識した気持ちが基になってこのような作品に仕上がった」と魏さん。作品に自信はあったものの、どう評価されるか不安だったといい、受賞の連絡を受けた時は「とにかくびっくりした」と率直な気持ちを明かした。

審査員を務めた山村仁志・東京都美術館学芸担当課長は魏さんの作品について、「余白の使い方と色彩のバランスに優れていた。わずかな要素だけで、大きな画面を見ごたえのある絵画に変える実力が審査員に強い印象を与えた」と評した。

魏さんは博士課程では「情報を受け取るギャップ」をテーマに研究している。魏さんは聴覚に障害がある。かつて聞き間違えた言葉や、魏さんにとってはほぼ黙劇状態となる「字幕がない映像」を見た経験によって得た感情を基にして作品を制作していきたいと抱負を明かした。日本での個展開催も目標に掲げる。

魏さんの作品は13日にSOMPO美術館で開幕する「FACE展2021」で展示される。来月7日まで。同展にはコンクールの受賞・入選作品が展示され、会期中は観覧者投票による「オーディエンス賞」の選出も行われる。

(名切千絵)


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