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  • コラム

コーヒーを流行から文化に 台湾と日本のカフェやロースターが交流深める

2018/05/17 05:07

「台湾」と聞くとお茶を思い浮かべる人が多いかもしれないが、コーヒー好きだという台湾人は案外多い。街には大手コーヒーチェーンが競うように立ち並び、路地裏には個性豊かな個人経営のカフェが集まる。平日の昼下がり、オフィス街にあるコーヒースタンドにちょっとした列ができているのも、もはや当たり前の光景となった。だが、台湾では近年、カフェやコーヒースタンドが増える一方で、安定した経営を続けるのが難しくなっているといわれている。 

台湾で広がりをみせているコーヒー文化の今とこれからを探るため、記者は台北市内で3月24~25日に開催された台湾と日本のカフェやロースターが集結するイベント「Culture & Coffee Festival」を取材に訪れた。

 

イベントが開催されたのは、日本統治時代のたばこ工場を再利用した松山文創園区。敷地内には大きな古い建物が並び、展覧会などアートや文化に関するイベントが開催されており、週末はおしゃれや流行に敏感な若者たちでにぎわう。

イベントが開催されたのは、日本統治時代のたばこ工場を再利用した松山文創園区。敷地内には大きな古い建物が並び、展覧会などアートや文化に関するイベントが開催されており、週末はおしゃれや流行に敏感な若者たちでにぎわう。

▽コーヒーを流行から文化に

オープンしたばかりのおしゃれなカフェが3カ月後には別のお店に変わっていることも決して珍しくないと話すのは、イベントを主催した「Fujin Tree(富錦樹)」グループの事業単位総経理、小路輔さんだ。同グループは台北市内の富錦街でアパレルショップやカフェ、レストランなどの事業を展開。同エリアがおしゃれな街として認識されるようになったきっかけを作った。コーヒーを一時の流行で終わらせるのではなく、文化として台湾に根付かせるきっかけを作ろうと今回のイベントを企画したという。

開催は昨年7月に続いて2回目。記者が訪れた初日の24日は土曜日ということもあり、オープンの午前10時前には多くの若者たちが詰め掛け、入り口に長い列をなしていた。

 

会場内の様子。日本と台湾のカフェやロースターの出店ブースが並ぶ。

会場内の様子。日本と台湾のカフェやロースターの出店ブースが並ぶ。

▽台湾でも注目を浴びる日本の有名カフェ

小路さんによれば、開催規模は前回の約4倍。その要因は日本からの出店の増加だという。前回は大部分が台湾のカフェで、日本のカフェは数店のみという構図だったのに対し、今年は台湾と日本が約30店ずつ、ほぼ同数となった。

会場で一際注目を集めていたのは日本の有名カフェだ。隣り合わせに設置された神保町の「グリッチコーヒー&ロースターズ」と中目黒の「オニバスコーヒー」のブースは、バリスタたちがドリップコーヒーを入れる実演を始めると、たちまち多くの観衆で周りが埋め尽くされた。両店とも前回に続き2回目の出店だという。オニバスのオーナー、坂尾篤史さんは、来場者から受け入れられていると感じたと話す。台湾での認知度の高さがうかがえた。

 

ドリップコーヒーを入れるオニバスコーヒーのバリスタ

ドリップコーヒーを入れるオニバスコーヒーのバリスタ

▽地方からも多数出店、来場者にコーヒーの多様さ伝える

台北や東京など都市の人気カフェだけでなく、地方のカフェやロースターも多く見られた。主催者側によれば、出店者の選定の際、都市と地方の配分が均等になるよう気を配った。都市と地方、人気カフェと個性派カフェなど、さまざまな店や業者を紹介することで、来場者にコーヒーの多様さや奥深さを体験してもらうことが狙いだという。

台湾各地のコーヒーやカフェについてより多くの人に知ってほしいと語るのは、南部・高雄市でカフェ「GAVAGAI」を営む藍啓航さんだ。藍さんはコーヒー豆の生産が盛んな南部・屏東県の出身。藍さんによれば、屏東のコーヒー豆栽培の基礎は日本統治時代に築かれた。だが、戦後それが引き継がれず、産業が一時停滞。現在は、先住民によるコーヒー豆の生産が奨励されており、先住民集落で営まれるコーヒー農園が増えているという。

近年、台湾好きの日本人の間でじわじわと注目度が高まっている南部・台南市からは「パリパリ」が参加。オーナーの阿左さんは、台南市では昨年だけで200軒ものカフェがオープンし、競争が激化していると話す。同店ではカフェ以外にも骨董店や民宿などを展開し、周辺商品も販売するなどして差別化を図っているという。

 

南部・高雄市でカフェ「GAVAGAI」を営む藍啓航さん(右)。共同経営者の秋謙さんは挿絵画家。この日はエスプレッソを原料にした絵の具でイラストを描く実演を行った。

南部・高雄市でカフェ「GAVAGAI」を営む藍啓航さん(右)。共同経営者の秋謙さんは挿絵画家。この日はエスプレッソを原料にした絵の具でイラストを描く実演を行った。

▽生活の中にコーヒーを

イベントではコーヒーだけでなく、お菓子や音楽、文房具、植物などを販売する業者も出店。コーヒーと共に楽しめるものを一緒に紹介することで、コーヒーを生活の中に根付かせるライフスタイルの提案がなされた。

墨田区曳船の「東向島珈琲店」はコーヒーフレーバーのナッツを販売。マスターの井奈波康貴さんは台湾の印象について、日本よりも食に気を使う人が多く、食べて健康になろうという意識が強いと感じると話す。数年前から店に来る台湾人が増えるようになったといい、食に気を使う台湾人に店を気に入ってもらえるのはうれしいと目を細めた。

コーヒーと一緒に音楽も楽しんでもらおうと会場では1日を通してさまざまなアーティストによるライブが開催された。

コーヒーと一緒に音楽も楽しんでもらおうと会場では1日を通してさまざまなアーティストによるライブが開催された。

▽ブームが去るのが速い台湾で文化を発展させる難しさ

コーヒーを文化として台湾に根付かせるにはまだこれからだと小路さんは真剣なまなざしで話す。台湾では2000年代から急激にコーヒーの需要が拡大した。コーヒーチェーンの開業やコンビニコーヒーの普及が進んだことで、安価でおいしいコーヒーが手に入りやすくなったことが要因とされる。

だが、小路さんは、台湾では一度火が付いたとしても、ブームが過ぎ去るのは日本より圧倒的に速いと感じている。オープンしたばかりの店がすぐに閉店してしまったり、創刊した雑誌が続かなかったり、コーヒーに限らずさまざまな面において台湾で文化を発展させることは難しいといい、日本で出版される台湾のガイドブックが情報の寿命を考慮し、新しい店よりも老舗の紹介を好む「レトロ押し」の傾向があるのはそのせいではないかと考えを語った。

▽主催者や出展者、来場者が共に学び合うことで文化が広がる

小路さんは、主催者や出店者は共に学ぶ気持ちで参加していると話す。前回出店した日本のカフェは当初、自分たちのコーヒーを台湾の人たちに披露するつもりで参加したものの、逆に台湾のカフェやロースター、来場者たちの真剣さに刺激を受けたのだという。その経験が日本に帰国後、同業者にも伝えられ、今回の出店数拡大につながったと小路さんは考えている。

一方で、イベントの主催者やコーヒーを提供する側だけが一方的に文化として発展させようとするだけでは不十分だと指摘。文化を享受する側である消費者がイベントを通じて知識を深めることが大事だと話す。イベントでは、自分の好みのコーヒーを見つけてもらうためのワークショップも実施された。主催者や出店者、来場者が一体となってコーヒーに対する理解が深まったときに相互間の交流が豊かとなり、文化として広がっていくのではと小路さんは語った。

イベントの仕掛け人、Fujin Tree(富錦樹)グループの事業単位総経理、小路輔さん

イベントの仕掛け人、Fujin Tree(富錦樹)グループの事業単位総経理、小路輔さん

(楊千慧)


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