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▽ランナーから見た今後の課題
フルやハーフを走ったランナーに話を聞いてみたところ、来年以降の実施に向けて課題も見えてきた。外国人招待選手として出場した田谷輝人、上北泰弘、山田佳史の日本人3選手によれば、コースには距離表示がなかったため、ペース配分や気持ちの面で影響を受けたという。また、風の強さに苦しめられたことを揃って口にし、風がそれほどない時期への変更や追い風になった後半部分のみでの開催などの意見を出していた。特に、「澎湖跨海大橋」の風の強さは相当なもので、実際2.5キロのところが10キロほどの長さにも感じたという。給水所でのドリンクの配置やゴミ箱、救護所の問題も指摘された。
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記者自身としては、コースの景観に物足りなさを感じた。5キロのコースには歴史的建造物は少しあったものの、おそらく今回の大会の特色である海の景色が見られるところがあまりなかったのが少し残念だった。5キロは距離が短い分、もう少し海岸に近いところを走りたかったというのが本音だ。▽強風が“強み”にも?大会を振り返ると、やはり印象に残ったのは「強風」だ。ただ、苦しめられた一方で、逆に強風が「強み」になるのではないかとの意見も視察団参加者からは上がった。確かに、前述した日本人3選手も「日本では経験できない」「追い風ではいままでにない走りができて面白かった」など前向きな感想ももらしていた。
大会前日、交通部観光局の陳淑慧副局長に強風について考えを聞いてみたところ、「強風は選手にとっては挑戦。だからこそ歩みをゆるめ、よい成績を追求するというよりは、ゆっくりと周りの景色を楽しんでほしい」との言葉が返ってきた。「成績は一番重要なことではない。大切なのはエンジョイすること」と陳副局長。風も楽しむ要素の一つにしてしまえばいい、ということだ。
陳副局長によれば、同大会は「世界で最も美しい湾クラブ」の本部があるフランス・ヴァンヌ市で開かれるヴァンヌマラソンと今年、提携を結んだ。台湾のマラソン大会が海外の大会と姉妹大会になるのは初めてだという。日本で開かれるマラソン大会との提携にも意欲をみせた。長い橋を走るという共通点がある「ちばアクアラインマラソン」との提携の可能性について尋ねられると、「千葉県側にその意思があるのであれば、われわれは喜んで」とラブコールを送った。来年は11月4日の開催が決まっている。今後定着させていくため、「より多くの地元の人が沿道で選手へ声援を送ってもらえるようになれば」と話し、地域一体となったイベントにできるよう期待を示した。
(名切千絵)