池上に行ったからには、有名な「池上弁当」を食べたい。池上弁当を売る店は池上駅周辺に点在しているのだが、中でも有名な「全美行」と「家郷」の2店の弁当を食べ比べしてみた。
◇全美行VS 家郷池上駅前の道路脇に斜め向かいに位置する2店。両者とも創業数十年を超える老舗だ。
2つの弁当を並べてみると、全美行の方が具材がしっかりと白米の上に敷き詰められている上に、色もはっきりしており、豪華な印象を受ける。家郷はやや質素。具材は煮玉子、ソーセージ、豚ロース、しょうがなどが共通で、その他の付け合せはやや異なる。色からも分かるように全美行は全体的に濃い目の味付けがされていた。両店で大きく異なるのは野菜。写真では家郷のほうに野菜が入っていないが、実は同店は、野菜は客が自由に取る方式を採用しているのだ。この方式だと野菜の汁で米がべたつく心配もなく、さらに十分に野菜が摂取できるため、客にとってはありがたい。池上弁当の主役とも言える白米は、家郷はふんわりとしていて甘みも感じられ、米どころ池上の本領発揮といったところ。一方、全美行は米がやや硬めで、特別な美味しさは感じられなかった。
客層は全美行には若者が多く、家郷には全美行に比べて年齢層が高い印象を受けた。味付けとしても全美行は若者向け、家郷は年配向けだと感じた。記者の個人的な評価は白米は家郷に、具材は全美行に軍配。総合的には甲乙つけがたい。
◇「池上弁当」の歴史そもそも池上弁当とはどのようにして生まれたのだろうか。米の産地の池上だから当初から白米が使われていたと思いきや、実はそうではないという。
「池上飯包文化故事館」によると、池上弁当の原型は日本統治時代の昭和10(1935年)年代、列車で長旅をする人の空腹を満たそうと、駅のプラットホームで販売されていた「いも団子」。その後、当時天皇に献上していた池上米で作ったおにぎりと、レバーや豚肉などの具材を竹の葉で包んだ弁当が販売されるようになり、数度の進化を経て現在の形になったという。◇コメを使った商品いろいろ池上では弁当以外にも、コメを使った商品が販売されている。
米を使ったアイスクリームはコメの粒を感じられ、とてもあっさり。低脂肪、低糖、低カロリーで女性や高齢者にはうれしい。記者が食べたのはプレーンだが、味のバリエーションは豊富で、黒米や小豆、紫芋、台東名産のローゼルなど健康的な素材を使ったアイスがそろう。
米で作ったグルテンフリーのクッキーも。2016年に行政院農業委員會農糧署が実施した「全国農村特色米穀雜糧ベーカリー商品コンペティション」で佳作に選ばれたというお墨付きの商品。台東特産のパイナップルやローゼルを使った味もあり、お土産にぴったり。池上は農村とはいえど、池上米やサイクリングコースなどによって確かなブランドイメージを作り上げている。見どころも少なくなく、たっぷり半日を使って観光を楽しめた。台北から列車だと最速で約3時間強と近くはないが、東部を観光に訪れる際に立ち寄ってみると、台湾の魅力をまた一つ発見できるかもしれない。(名切千絵)