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日本統治時代の面影を感じる旅~平渓線沿線を歩く~

2017/02/23 17:57
平渓線
平渓線

沿線で天灯飛ばしなどが楽しめることから、週末には多くの人で賑わう台湾北部のローカル線「平渓線」。日本統治時代に炭鉱開発のために敷かれた鉄道を前身としているため、沿線には当時の面影を残すスポットが点在している。記者は菁桐駅から十分駅までの周辺にある日本統治時代関連のスポットを巡った。

菁桐駅。写真撮影に訪れる鉄道ファンも多いという
菁桐駅。写真撮影に訪れる鉄道ファンも多いという
◇炭鉱集落として栄えた「菁桐」

平渓線の終点、菁桐駅の周辺一帯は1920年代に炭鉱集落として繁栄した。1929年に開業した菁桐駅は現存する数少ない木造駅舎の一つ。1994年に大規模改修されたものの、日本統治時代に使われていた机や貴重品ロッカーなどは現在でも残り、昔ながらの風情が漂う。

炭鉱遺跡
炭鉱遺跡
駅の向かい側にある斜面を上ったところにはかつての炭鉱施設が点在。元々あった建物は壁や天井が崩れ落ちていたり、すでに骨組みを残すだけになっていたり、廃墟といった雰囲気だ。

石底大斜坑。1939年に完成した
石底大斜坑。1939年に完成した
ひときわ目を引く半円形の施設は「石底大斜坑」。近隣の複数の炭鉱で採掘された石炭を集中して運び出すのに使用されていた。中をのぞいてみると底が傾斜になっているのが見えた。

線路
線路
石炭を運搬していたと思われる線路も一部残っている。

台湾ドラマ「僕らのメヌエット」に登場
台湾ドラマ「僕らのメヌエット」に登場
同所にはどこか懐かしい空気が漂っており、写真撮影を楽しむ人の姿もちらほら。台湾ドラマ「僕らのメヌエット」(妹妹)のロケ地として使われたこともある。

石炭選別洗浄場。現在ではカフェが入居している。
石炭選別洗浄場。現在ではカフェが入居している。
「石底大斜坑」より一段低い場所にある赤れんがと三角屋根が特徴の建物は、石炭選別洗浄場。1921年の建設当初は主に木造の簡易建築だったものの、1960年代に整備され、現在の姿になったという。

総事務所
総事務所
総事務所は骨組みだけが残っている。炭鉱遺跡の現在の姿は、炭鉱の閉山に伴う地域の衰退を如実に感じさせた。

駅のすぐそばにはかつての炭鉱業の様子を紹介する「菁桐鉱業生活館」が。当時の写真などが展示され、歴史に触れることができる。

平渓老街
平渓老街
◇日本統治時代後期の施設が残る「平渓」

菁桐駅のお隣、平渓駅周辺には古い街並み「平渓老街」があり、石畳の路地には古くから続く商店や飲食店が軒を連ねる。

平渓郵便局のポスト。同型のポストは1960年代には台湾全土でよく見られたものの、次第に廃止されたという
平渓郵便局のポスト。同型のポストは1960年代には台湾全土でよく見られたものの、次第に廃止されたという
平渓老街の外れにある平渓郵便局には、日本統治時代後期に設置されたといわれる鋳鉄製ポストが設置されている。台湾最古のポストだという。

防空壕
防空壕
郵便局の裏手の丘には第2次世界大戦中に造られた防空壕が残る。5つの穴は中でつながっており、約100人を収容できるという。

平安鐘(警報鐘亭)
平安鐘(警報鐘亭)
丘の上の見晴らしのいい場所に吊るされている鐘は平安鐘(警報鐘亭)。日本統治時代末期、米軍の空襲を地域住民に知らせるために設置された。当時は石炭採掘や鉄道の安全を確保するため、同所で昼夜の監視が行われていたという。鐘の大きさは20~30センチといったところで大きくはないが、重要な役割を担っていたことを感じさせた。

観光客で賑わう十分老街
観光客で賑わう十分老街
◇最も早く開発された「十分」

十分駅周辺は、炭鉱業で栄えた平渓において、最も早く開発され、最大の規模を誇る地区。現在平渓観光の目玉となっている天灯飛ばしは1990年代ごろから観光資源としてPRされるようになったもので、十分は天灯発祥の地とされる。「十分老街」には天灯関連の商店や工芸品店、飲食店が立ち並び、週末には多くの観光客が押し寄せる。また、線路上やその周辺で天灯を上げる光景は同地の名物ともなっている。(注:線路への立ち入りは法律で禁止されており、違反者には罰金が科される)

平渓の観光名物、天灯。日本や韓国、欧米の観光客も多くみられた
平渓の観光名物、天灯。日本や韓国、欧米の観光客も多くみられた
◇終わりに

天灯や古い街並みで人気を集めている平渓線沿線。日本統治時代の施設の多くは目立たない場所にあり、ただ沿線を観光するだけでは見過ごしてしまいがち。今回紹介したスポットのほかにも、招待所として1939年に建設された台陽倶楽部(太子賓館)や炭鉱開発に従事した職員の住居として使われた日本式宿舎群など、日本統治時代の施設は数多く残されている。天灯を飛ばすついでにでもこのような場所を巡り、日本と台湾の歴史に思いを馳せてみてはいかがだろうか。

(名切千絵)

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